2017年8月2日水曜日

【教員インタビュー】文学研究科 佐藤伸宏教授

 本学文学部では、1年生の間は川内北キャンパスを中心に全学教育という総合的な学問を学び、2年生からは研究室に所属して専門的な講義を受ける。今回は文学部の研究室の一つである、国文学研究室の佐藤伸宏教授に話を伺った。




 ―どのような研究をしていますか

 日本文学です。その中でも明治以降の近代文学、近代詩の研究をしています。また海外と日本の文学作品を比較する、比較文学の研究もしています。

 比較文学とは日本人が海外の文学に触れた時、それをどのように理解したのか、そしてどんな影響を受けたのか研究するのが基本です。比較文学の研究のなかで重要なテーマの一つに翻訳があります。翻訳とは外国文学に対する理解の形であり、それは歴史的な制約も背景となって現在の解釈とは異なる場合が少なくありません。しかしその差異のなかにその時代の受け入れ方が現れているのであって、多様な読み方を許容する文学を理解する手立てとなります。

 ―現在の分野を志したのはいつですか

 国文学の研究のきっかけは素朴な読者としての体験です。忘れがたいのは中学2年生のときの体験ですね。国語の授業で教科書に載っていた詩を読んだとき、一気にその詩の世界に引き込まれ、気付いたら授業が進んでいました。私が詩の世界に引き込まれていた時間と、実際に経過していた時間との間に余りに大きな落差があって、とても驚きました。その驚きが、私が今の道へ進む一つのきっかけとなりました。

 ―学生時代はどのように過ごしていましたか

 高校時代は、さまざまな小説や詩を読みました。東北大学に進学して、大学生になっても、その頃は授業の休講も多かったものですから自由に使える時間が多く、やはり本をたくさん読みました。

 また、当時も国文学研究室に所属していて、先輩や後輩とよく議論したね。研究室ではいろいろな個性を持つ人たちと濃密に交流して多くの刺激を受けることができたので、とても良かったと思っています。

 ―高校生にオススメの本などありますか

 文学の中には読者の期待に沿った展開をする物語もあれば、読者の予期から外れて、すぐには理解しにくい物語もあります。前者よりも、むしろ後者を読んでそのわかりにくさを体験してほしいですね。わからなさを感じたら、そもそもわかるとはどういうことなのか考え、またそのわからない自分の思考の枠組みを作り直しながら、何度もその物語を読む。例えば夏目漱石の小説などに取り組んでみてはいかがでしょう。

 ―本学学生の印象を教えてください

 みんな真面目で本当にいい学生がそろっています。でも時として真面目さは臆病さや必要以上の慎重さを生み出しかねません。もしも分からないことがあったら恐れずにその前で立ち止まる勇気も持ってほしいですね。

 ―高校生へメッセージをお願いします。

 先ほども言いましたが、つまずいたり、立ち止まったりすることを恐れないでください。立ち止まって自分自身の力で考えることを大事にしてほしいと思います。

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