2017年8月3日木曜日

【教員インタビュー】理学研究科・ニュートリノ科学研究センター長 井上邦雄教授

 ―どのような研究をしていますか

 カムランドというニュートリノ検出器を用いてニュートリノの研究をしています。現在は、特にニュートリノがマヨラナ性を持つか検証しようと観測を続けています。




 ニュートリノに関してニュートリノと反ニュートリノの存在を分けて考える「ディラックニュートリノ」と二つを同一のものと見なす「マヨラナニュートリノ」の二種類があります。ニュートリノがマヨラナであることを証明できれば、宇宙に物質が残った理由やダークマターの存在に関して重要な手がかりになると考えています。現在ニュートリノがマヨラナであることを確かめるために、反ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊を観測しようと実験を進めています。中性子二つがベータ崩壊を起こす二重ベータ崩壊では、中性子崩壊時に電子二つ及び反ニュートリノ二つが放出されます。しかし、ニュートリノがマヨラナであった場合は反ニュートリノ同士で対消滅が起こる可能性があり、電子二つのみが観測されることとなります。

 現在、実験に使うニュートリノ検出器としてカムランドを活用しており、2重ベータ崩壊核であるキセノン136をバルーンに入れる方法を用いたことで、世界最高感度の観測に成功しています。このまま改良を重ねて世界最高感度を維持できれば、我々が世界初の反ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の観測ができると期待しています。

 ―ニュートリノに興味を持ったきっかけは何ですか

 私は、1988年に大阪大学の素粒子の研究室に配属されたのですが、当時は、ニュートリノというのはとても不思議な素粒子であると認識されていました。私は研究室で太陽ニュートリノの観測を行っていたのですが、研究を進める内にニュートリノの面白さにはまり、その世界にのめり込んでいきました。

 ―研究においてつらいことはありますか

 現在ニュートリノの研究は莫大な費用がかかる上、結果を出すことを世界から求められているため、大きな責任が伴います。しかし、どんなに頑張っても結果を出せないこともあるため、そんなときに周りから責められるのが辛いです。また、肉体的な苦しさもあります。しかし、全体としてはやりがいの方が大きいです。

 ―ニュートリノ科学研究センターの様子を教えてください

 学生も研究者の一員として、一緒に研究をしています。みなさん研究にのめり込んでいて、抜群のチームワークを発揮しています。また、海外から来る方も多く国際性が豊かです。

 ―どのような学生時代を過ごしましたか

 高校時代、私は数学が好きだったので、数学を使いそうで、且つなんとなく難しそうだった大阪大学物理学科に入学しました。その後、理論が集約されシンプルである素粒子の研究室に入り、研究にのめり込みました。

 その後、指導教員が東京大学に移ったので私も東大について行きました。そこで、当時世界最先端の検出器であったカミオカンデに出会い、世界最先端の研究に魅了されました。

 ―高校生に一言お願いします

 ぜひ、何かに打ち込んでほしいです。現在の学生のみなさんは私たちの頃と比べて非常に賢いと思います。ただ、その賢さがあだとなって自分の心にブレーキをかけているように感じます。自分の心に素直になって、自分がやりたいことにのめり込み、自分の100%をそこにつぎ込んでください。

0 件のコメント:

コメントを投稿