2017年8月3日木曜日

【教員インタビュー】情報科学研究科・工学研究科 乾健太郎教授

 本学では、世界が注目する分野を多く研究している。その中でも、人工知能を研究対象の一つとしている、情報科学研究科の乾健太郎教授に話を伺った。




 ―どのような研究をしていますか

 知能情報学です。会話という、人間が無意識に行う知的な情報処理のメカニズムをコンピュータの計算により実現させることが目的です。平たく言うと人工知能です。僕の研究室では、コンピュータに言葉を教えるという機械学習を通した自然言語処理を研究しています。

 機械学習の手段は2種類あります。一つはデータを用いて文章を単語に区切って言葉の使い方を学習させる方法、もう一つは、会話の返答の仕方が多様な場合、言葉を使う傾向を統計的に探して単語の意味を学習する方法です。たとえば、「食べる」という言葉には「アイス」や「パフェ」などの食物の言葉が付随します。すると、機械はデータから「食べる」に付随する言葉を食物の言葉として認識し、単語の意味を学習します。

 現在、機械学習を用いてできることは、明示された内容の一部を抽出して解釈することなので、未だ文章の中で暗示された内容を完全には解釈できていません。そこで、コンピュータが少しでも多くの内容を正確に解釈できるようにすることが僕の研究です。

 ―知能情報学に興味を持ったきっかけは

 大学で一度だけ開講された自然言語処理の講義を受けたときでした。元々言葉に関心があったので、自然言語処理は計算から言葉に注目し、まるで自分が理系の世界と文系の世界の境界にいるかのようだという点において大変興味深いと思ったのがきっかけです。

 ―会話を通して人間と機械が共存することは実現できますか

 どう実現するかは分かりません。現在、研究途中で機械は自然に会話することができていません。ですから、もしかしたら人間が機械に分かりやすく明示的に話す必要があるかもしれません。また、現在機械は返事を出す時、あらかじめ人間がプログラミングを通じて指示したルールに従いますが、将来、機械自身が文脈を理解して人間の生活に入り込み、互いにコミュニケーションをとることが増えるかもしれません。そもそも人と機械が共存するには、言葉を理解する上で人間の常識が重要です。たとえば、痛みや眩しさなど、五感それぞれがどのようなものか機械自身は経験できません。その際、人間の常識から推論を立て、返事を出して初めて会話が成立できます。

 ―研究を通して目指していることは

 二つあります。一つは、常識的な推論や文章の行間を読むことができるコンピュータを作ることです。もう一つは、考える能力を学生に身につけてほしいということです。研究において問題が何かとそれに対する仮説を考え、先行研究を調べます。そして人と議論して自分の考えを述べ、人の考えを取り入れます。また、実験を通して試すことも忘れてはいけません。このことは社会で活躍するために必要なことで、能動的に活動するには研究が良い演習になります。そのためにも、研究活動を通して学生が成長できるような研究を行っています。

 ―高校生のみなさんに一言お願いします

 面白いものを見つけることができると、人は成長します。僕自身は、ひと目で面白いと思ったことに出会ってから意識が変わりました。読書や勉強などに積極的に励み、能動的に行動するようになりました。もしまだ興味のあることを見つけていない場合でも遅くはありません。面白いことは世の中にはたくさんありますが、人はそんなに多くを知らないはずです。その中でも、自分が面白いと思うことが何かを探すことが大学でできることです。わくわくできることを大学でぜひ見つけてほしいです。

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